ミュステル・ハルモニウムの妖しくも艶やかな魅惑の響き

今回使用するハルモニウムは1892年フランス・ミュステル社製で、12月5日の演奏会に出演いただく西沢央子さんが個人で所有する楽器です。2017年に現代の楽器と共演できるように修復、ピッチをa’=436Hzから442Hzに変更し、プロロンジュマン(低音部で押した鍵盤を鳴っている状態に保持する装置)を付加しています。
 

▲公演で実際に使用するハルモニウムのカタログ
 
ハルモニウムは19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパで広まった足踏み式のオルガンです。小学校などでおなじみのリードオルガンは、ハーモニカでたとえると息を吸うとリードが震えて音が鳴る仕組みで作られていますが、ハルモニウムは逆に息を吐くと音がでる仕組みで鳴る楽器です。ハルモニウムは大きな場所と経費を要するパイプオルガンの代用楽器として普及しました。
 
特にミュステル社はこの楽器の可能性を最大限に表現できる様々な音色のリードと特殊な機能を備えた規模の大きい精巧な楽器を作りました。アメリカで発達し、大量生産に適したリードオルガンの興隆とともに、職人的な調整を要するハルモニウムは次第に製造されなくなり、忘れ去られてしまいました。そのため、現存して実演に供することができるものは非常にまれです。          
 
珍しいハルモニウムは、その後しばしばリードオルガンや電子楽器で代用されることがありました。しかし、ハルモニウムならではの、ときに猫の鳴き声にも似たその妖しくも艶やかな音色と合奏全体を包み込む柔らかな響きには代えがたい魅力があり、近年、現存楽器の保存や修復の動きも大きくなっています。 
 

公演情報


2018年12月5日(水)19時開演
紀尾井ホール室内管弦楽団管弦楽団によるアンサンブルコンサート3
バラホフスキーとともに
バイエルン放送交響楽団の名手たちを迎えて
ブルックナー交響曲第7番(室内楽版)