2022年度よりトレヴァー・ピノックが当団第3代首席指揮者に就任

紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)は第2代首席指揮者ライナー・ホーネック氏の任期満了を受け、2022年度よりトレヴァー・ピノック氏を第3代首席指揮者として迎えることを決定いたしました。 トレヴァー・ピノック氏がKCOにデビューしたのは、旧紀尾井シンフォニエッタ東京時代の2004年10月(第46回定期演奏会)。以後、2020年2月の特別演奏会を含む計5回の客演を経て、2022年度シーズンより3年間、定期演奏会年2回出演の契約でKCO第3代首席指揮者に就任します。
1970年代からのイングリッシュ・コンサートでの華々しい活躍をはじめ、現在に至るピリオド楽器・ピリオド音楽のムーヴメントを作り、かつ今日まで牽引し続けてきた深い経験と知識をKCOにもたらすこと。そして同時に、作品の躍動感や流れを活かした氏ならでは爽やかな音楽表現、さらに得意のバロックや古典派にとどまらず、また器楽から声楽まで広範なレパートリーを持つピノック氏の豊かな創造性をKCOとともに日本の音楽ファンにお届けすること ――― ホーネック氏(2022年度より名誉指揮者に就任)と築いた成果の上に、ピノック氏とのパートナーシップをさらに積み上げてゆくことで、KCOの一層の充実を皆さまにお届けできればと願っております。
 

トレヴァー・ピノック

Trevor Pinnock

トレヴァー・ピノック
1946年英国カンタベリー生まれ。奨学金を得て王立音楽院でオルガンを、さらにチェンバロも学び、チェンバロ奏者としてアカデミー室内管等で活動を開始。学生時代にはガリヤード・トリオを結成し、1966年に同トリオでロンドン・デビュー、1968年にはチェンバロ奏者としてソロ・デビューした。1972年にガリヤード・トリオを発展させ、ピリオド楽器オーケストラ「イングリッシュ・コンサート」を創設。当初7名だった同楽団はすぐに発展拡大し、世界的名声を獲得した。2003年まで30年間にわたって同楽団を率いた後、活動の幅を広げるため勇退。以降は指揮、独奏、室内楽や数々の教育プロジェクトなどで活躍している。特に指揮者としては2011~2015年シーズンに首席客演指揮者を務めたモーツァルテウム管弦楽団をはじめ、ドイツ・カンマーフィル、ロス・フィル、ゲヴァントハウス管、コンセルトヘボウ管、フランス国立管、サンタ・チェチーリア管ほかに定期的に出演。2006年には自身の60歳の記念にヨーロピアン・ブランデンブルク・アンサンブルを創設。彼らと録音した《ブランデンブルク協奏曲》全曲のディスクは08年のグラモフォン・アワードに輝いた。2021年はポツダム室内アカデミーへの客演のほか、リトアニアのNžemė国際音楽祭でヘンデルの歌劇《アシスとガラテア》(ウェイク=ウォーカー/カント演出)、22年はフランドル歌劇場でモーツァルトの歌劇《コジ・ファン・トゥッテ》(ケースマイケル演出・振付)を指揮した。
2022/23シーズンは、これまでにボルツァーノ=トレント・ハイドン管(モーツァルト《レクイエム》)、ロイヤル・アカデミー・オペラ(ストラヴィンスキー 歌劇《放蕩児の遍歴》)、パリ室内管(ソリスト:レ・ヴァン・フランセ)、バーゼル室内管およびモーツァルテウム管(ともにソリスト:ピレシュ)、ポツダム室内アカデミー(ソリスト:ポディヨモフ)等を指揮し、さらにフランス国立管と6月(ソリスト:ピレシュ)と12月(ソリスト:ギル・シャハム)、2024年にはコンセルトヘボウ管との共演等を控えている。
また、2021年にはダニエル・ハーディングの後任として、イタリア・ピサの音楽祭「アニマ・ムンディ」(ジュゼッペ・シノーポリ創設)の音楽監督にも就任した。
録音での最新作は、バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻全曲(2021年録音)。次回作としてトマス・エーラー編曲の室内オーケストラ版 バッハ《パルティータ集》が今秋リリースされる予定。
1992年大英帝国勲章CBE、1998年フランス芸術文化勲章オフィシエ受章。紀尾井ホールには1995年にイングリッシュ・コンサートを率いて初登場。1995年に再び同コンビで、さらに1999年および2001年にはレイチェル・ポッジャーやジョナサン・マンソンらとのアンサンブルで出演した。紀尾井ホール室内管弦楽団には2004年の第46回定期演奏会でデビューし、12年第86回、16年第104回に再登場、さらに15年の創立20周年記念特別演奏会と20年の創立25周年記念特別演奏会も指揮した。

写真:Gerard Collett

 
首席指揮者就任にあたってのごあいさつ
 
この度、紀尾井ホール室内管弦楽団の首席指揮者に就任することをとても嬉しく、そして光栄に思っております。
私にとって、このオーケストラの音楽家たちとご一緒するのは、日本を訪れる中で常にもっとも重要なことでした。
私たちはこれまで17年間にもわたって共演を重ねることで、音楽作りにおいても、また大きく異なる文化を持つ人間同士としても、互いの理解と信頼を成長させてきました。
中でも、KCOとは音楽上の共通点がとても多く、共同作業を通じて互いの感情や感動を分かち合う体験を積んでこられたのは、最もエキサイティングで満足していることのひとつです。
共に音楽を作っていく過程において人間的な側面は深く重要です。日本人と英国人という異なる文化的伝統を持つ私たちが、にもかかわらず一致した表現方法を見出せるような音楽や我々の共有の人間性を探求することはきわめて意義深いことです。
2022年から始まる日本の仲間との特別な旅が今から楽しみでなりません。そして私たちは、聴衆の皆さまにとても素晴らしいものをお届けできると確信しています。

トレヴァー・ピノック